山本五十六の言葉「やってみせ」

1. 山本五十六の言葉との出会い

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」

── 山本五十六

これは、私の好きな言葉であり、これまでの仕事の中で幾度となく実践してきた言葉です。

説明するまでもありませんが、この言葉は、まず自らがお手本をやって見せ、手順や理由を説明して聞かせ、実際にやらせてみて、そしてできたことを褒めて認めてあげなければ人は主体的に動かない、という人材育成や指導の心得を説いたものです。

私は今でこそ、独立してフリーランスのような形で仕事をしていますが、その前は新卒から企業に勤めていました。新人の頃に教わる立場を経験し、その後年齢を重ねてからは後輩や部下を教育する立場も経験しました。

実は、私がこの山本五十六の言葉を知ったのは、そうした経験を一通り経た後のことでした。

これまで自分が大切にしてきた「指導に対する考え方」そのものが言語化されており、知ったときはかなりの衝撃を受けたのを覚えています。それ以来、私にとって大切で特別な言葉として心に残り続けており、人に贈り続けている言葉でもあります。


2. 「やってみせ」に対する考え方

「やってみせ」については相手の成長機会を奪う行為だということを過去に聞いたことがあります。ですが、私はこれまでの人生経験を経て、私と同じ場所で向き合えている時点で、相手はすでに自ら考えることができる人だと捉えています。そのため、「自分で考えさせよう」とあえて遠回りをさせるようなことはせず、教え子が早く私と同じレベルまで成長してもらうために手本をやってみせているというのが私の考え方です。

かつての私と同じ課題に向き合い、同じところで悩んで時間を使うくらいなら、その限られた貴重な時間は「私よりも前に進むため」に使ってほしい、そして私を追い抜いてほしいという願いからです。

私の教育の根底には、私と同レベルの人を育てるのではなく、「私を超える人を育てること」があるのだと思います。

もちろん、この考え方が正解かどうかは分かりません。独立した今となっては、当時の教え子たちがその後どのように活躍しているのかを知ることがないため、もしかすると私の考え方は間違っているのかもしれません。ですので、これはあくまで私個人の考え方、個人的なポリシーとして捉えていただければと思います。


3. AIとの協働における共通点

独立して一人で仕事をしている現在、私の周りに直接の教え子はいません。

ですが、実は最近、この山本五十六の言葉をふと思い出し、強く意識する機会がありました。それは、日々向き合っている「AI」です。

AIと向き合っているとき、まるでそこに教え子がいるような感覚になることがあります。まず意図する実装やお手本をやってみせ、前提ルールや設計意図を言って聞かせ、実際に作業をさせてみて、うまく動いた流れをスキルとして定着してもらう。普段はあまりしませんが、「いい感じです」といった具合の程度でAIを褒めることもあります。

なんだかとても懐かしく、新鮮で、それでいて頼もしい気持ちです。

人を育てることも、現代のAIと協働することも、同じ目的に向かって進むという点では、どこか地続きなのかもしれません。これからもこの言葉を大切にしながら、目の前の新しい相棒とともに前へと進んでいきたいと思っています。